バンコク、カオサン。
本当にワクワクする街だ。たくさんの旅行者が、どこからか来て、去って行く。
そんなロマンチズムがアジアの安宿街にはある。
カオサンはバックパッカーの要所。ここに戻ってきた旅行者同士が、感動の再会をして抱き合っている場面もよく目にする。
僕はそのカオサンという街で旅行代理店を回り、カンボジア、シェムリアップまでのバスを手配した。
できるだけ安く買うことができるところを探し、一軒一軒丁寧に回った。
how much does it cost bus to シェムリアップ?
吃音の僕は、言葉が出にくい時だってあった。そんな時は、
bus to シェムリアップ!とお店に入りながら手短に叫んでごまかした。
そうか、勢いか!なんて気づいたり、そんなことがすごく楽しかった。
カンボジア行きが決まった僕は、セブンイレブンでビールを買おうとしていた。そうすると、アラブ系のおじちゃんが声をかけてきた。
ニッポンジン??
ビール、カウ??
イッショ、ノモウ!
高校生時代、アルバイトしていたマクドナルドの同僚、アラブ人に似ている。僕のことを陰湿にいじめていたんだよなぁなんて思い出した。まあ、そんなことは彼には関係ない。
僕らは街の片隅、暗がりのアスファルトの段差に座って、奢ってもらったビールを一緒に飲んだ。
なんでも、彼は日本の生地屋で働いていたことがあり、日本語が話せるようだった。
僕は彼に、飲まないの?と聞いた。
すると彼は、僕は少し飲めば十分だと言って、あまり飲んでいなかったのだ。
いろんな話をしたが、酔いが回ってきた頃、突然なぜかパスポートの話をしていた。
パスポートはどこにある?見せて?と聞いてきた。酔っ払いっていて冷静な判断ができなかった僕は、たまたま部屋に忘れて来たんだぁなんて喋ってしまった。
すると彼は、部屋で飲もう、という。
酔っ払った僕を介抱しながら、僕の泊まっていたゲストハウスの一階のレストランカフェまで来ていた。
そこでまた飲んだ。もちろん彼がおごってくれるという。
頃合いを見て、彼は部屋に行こうと誘ってきた。
しかし、レストランのスタッフは宿泊者以外は入室は許さないとそれ以上は彼を入室させなかった。
おっちゃんは、スタッフに怒鳴った。なんでだ。ただの友達だぞ。部屋で飲むだけだ。
次第に僕にまで怒りがぶつけられる。
金返せ!全部俺が出してやったんだぞ!
そこで我に返った。そういうことだったのか。パスポートが欲しかったのか。
彼は何を言ってももう無駄だった。
僕は、そのまま部屋のある階段を千鳥足で登って行った。後ろから何か叫ぶ声が聞こえるがもう気にしない。
そのままおっちゃんと部屋で飲んでいたらいったい何をされていただろう。
カオサンでは日本人が殺されたという話も聞く。僕は、本当に強運の持ち主だと思う。
その宿のスタッフの彼に感謝の気持ちを伝えようと思ったが、もう会えなかった。
僕はカンボジアに向かったのだ。
*写真はタイ北部やラオス、ミャンマーのチャイントンなどでも見た、ROTTYというもの。薄いクレープのようなもの。クルクル小さく巻いて棒状にする。チョコレートやいろいろトッピングでき、甘党の僕にはたまりませんでした。^ ^
山歩家 トラベルフォトライター
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