初めて一人で海外に行った時は、ほんと魔法のようだと思った。
僕はどもるから人生何もできやしない。そう決め込んでた。
こんな僕でも、見知らぬ外国に行って、見知らぬ人と話すことができて、仲良くなって、友達になって、ということが信じられなかったし、普通にそういうことが起きた。
15歳の時、お風呂に入りながらどもるから何にもできないなんて思ってたことが、全て吹っ飛んだ。
僕の旅のスタイルは、大体の行きたいとろやルートは決めて行くが、あとは何となく現地で決めた。
宿探しから始まり、その日どこに行くのか、バイクタクシーの値段交渉、何を食べるのか。
どもったってなんだって、全てやらなければならない。
宿決まってないならうちへ泊まれと怪しい感じの人に付け回されたり、予定なく散歩してるだけだって、バイクタクシー使えと、予定をしつこく聞いてくる。
とりあえずカオサン。
それが合言葉だった。
カオサンとは、東南アジア最大の安宿街。多くのバックパッカーがそこに集う。
空港からとりあえずタクシーに乗り込み、
カオサン、チープホテル
おっけーおっけー
と、タクシーは走り出した。
しばらく経って、タクシーは泊まった。ここがカオサンだという。だという。
写真で繰り返し見ていたカオサンのイメージと全く違う。そこは、大通り沿いのビジネスホテルのようだった。
ここチープホテル!オッケオッケー!
全然違うと思い、ここじゃないと言い張った。
しかし、タクシーの運ちゃんは大丈夫の一点張り。初めてだったのでもしかしてここなのかも…と自信なくなるし、どもるし、タイ語わかんないし、英語も通じないし、なす術なく、とりあえず泊まることにした。
しかもその宿は個室ドアの、鍵閉まらない、文句行ってもその部屋しかないと冷たい対応。
冷房が効きすぎていて寒い。弱めてくれと言っても一部屋だけ冷房を切ることはできない、とクールな受付。
初めての夜、僕はベットの上で寒すぎて丸くなりながら、
あーーーなにしに来たんだろう。
そんな風に思った。
でもめちゃくちゃワクワクしてた。
翌朝、早々に宿を出てカオサンに行った。やっぱりここはカオサンではなかった。
一軒一軒当たって、値段聞いて、部屋見て、やっと一つのところに決めた。
部屋を見せてくれたのは、とっても明るく感じの良い女の子。少し話をして、感じがいいなぁなんて思っていると、ブッタのポスターをくれる。本当に素晴らしい人なの。と。
宿はちょっと狭くて、小汚いけど、清潔に保とうとしていて好感が持てる。
窓を開けるとカオサンロードが見下ろせる。喧騒が心地いい。
昨日の宿が、日本円で3000円。この宿が300円。なんだか騙された気分。
ここから、僕の旅は始まった。
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