前の日、宿のドミトリーのドアを開くと、同じぐらいの年齢の男が、弁当を食べていた。話してみると共通の知人がいることがわかった。この奇跡に戸惑いつつも、とても盛り上がった。こんな沖縄の離島、しかもこんなところで、こんなつながりの出会えるとは・・・しかも、彼。バイクで島を一周中に事故を起こしてしまい、手を骨折してしまっていた。『ネタにしなきゃやってらんないすよ!あはは』と。僕も次の日にバイクで島を回る予定でいた。
翌朝、真っ暗闇の部屋の中、カメラの充電器を探していた。まだ缶の中にはまだビールが少し残っている。前の日、僕は酔ってそのまま寝てしまったのだ。僕はその彼とひとしきり盛り上がったあと、オリオンビールを片手に、外の共有スペースで写真の整理。旅の記録をまとめていた。どれぐらいの時間が立ったのかわからないが、いつのまにか部屋に戻り、静かに意識が消失していた。電気消してね、そう同部屋のチリ人に言われた気がするけど、その意識が戻った頃には電気はちゃんと消されていた。まだ日は出ていなくて暗い。暗闇の部屋をまさぐった。カメラを充電せずに寝てしまったので、困る…でも電気はつけられない…暗がりを精一杯探したけれど、もう限界だった。他の二人は寝ているし、しかも一人はバイクでで転び骨折していた右手には包帯が巻かれている。『ネタにしなきゃもったないっすよ〜』。と言いつつ、よく笑ってはいたが、寝るとき手がじんじんして辛いとも言っていた。ドミトリーは雰囲気も大好きだし、なにより安いし、それに運が良ければ出会いはある!いいことばっかりだけどこういうところは気を使うなと思う。なす術なく、僕は部屋の外の共有スペースにでた。風が冷たい。僕は、その寒さに耐えきれず、カメラとわずかなバッテリーを持って、島歩きに出た。
暗がりの時間から歩いていたので、お腹が空いてきた。宿に戻ろうというところでこの子に出会った。ご飯あげないとかわいそうでしょ、すこしだけすましているような楽しそうにリズムに乗っているような、そんな口調で彼女は言った。彼女の周りには片足のない猫。缶詰を食べようとしている。猫のお姉さん。食べなぁ、3匹の猫を順番に缶詰をちょっとずつ差し出す。本当に楽しそう。幸せそうだ。
宿に戻ると、僕は買っておいたソーキそばのカップ麺で朝食を済ませ、コーヒーを飲み、その間にカメラのバッテリーを充電した。僕は、島をバイクで回る予定だ。隣の阿嘉島まで行くというルームメイトを港まで見送りをし、僕はレンタバイク屋に行き、そのまま島を一周した。ひとり映画『モーターサイクルダイアリーズ』ごっこのはじまり。
※映画『モーターサイクルダイアリー』とは チェゲバラが若かりしころバイクで南米旅行をし、さまざまな出来事を通して南米の現実を知っていく物語