座間味村のホームページにはこんな魅力的なことがかいてある。クジラがこの座間味の海で恋をして、この海で子供を産んで、アラスカや、アリューシャンなどの北に行く体力をつけるまでこの海で子育てをする。そんな海でクジラを見ることが出来る。繁殖地域であるので若いクジラが多い。ダイナミックな動きも期待できる。ホエールウオッチング。調べていたら、そんなことがわかった。クジラに会いたい。僕は、航空券をとった。旅立つ前々日だった。
那覇の泊港からフェリーで約2時間、慶良間諸島・座間味島に行くことが出来る。那覇から2時間というアクセスのよさ。それにもかかわらず世界が恋するとまで座間味村が自画自賛する海。ホエールウオッチング協会には前日に電話をして、クジラを見るための予約を取った。そして、少しの期待と、夢を描いて船にのった。
座間味港についてから、少しの時間で港内にあるホエールウオッチング協会で受付、支払いを済ませ、少し歩いて島唯一のスーパー『105ストア』でホワイトチョコとポッキーを買った。
船に乗る前に、簡単にクジラの説明。外国の方向けになんともアナログな字幕。和やかな雰囲気で、僕らは船に乗り、クジラの見えるスポットまで移動した。僕の隣に座ったのは韓国人のカップル。なんとなく沈黙だったので、僕は彼らの前にチョコレートを差し出し、話すきっかけを作った。村上春樹が好き。少し話をしながら、クジラへの夢を膨らませる。エンジンが止まった。船が止まると、みんなそれぞれクジラの見えやすい位置に行く。親子のくじらがいるようだった。お母さんと、子クジラ。姿が見えたことに、みんな静かに声を上げる。視線はみんなそろってクジラの方向をむく。右で声が上がれば右を向いた。逆もしかり。僕は、最初わかりにくかった。感覚をクジラに研ぎすませて集中しなければ、クジラには気づけない。それでも少しずつ僕にもクジラが追えるようになった。すぐ船のそばまできている。すこし背中も出してくれた。船のすぐしたにもきて、青い海の中に白いクジラの陰影もわかる。こんなにクジラが近くにいる。なんだか実感がないような気もした。けど確かに事実であるし、実感が湧いてきた。そんなこんなで2、3時間はそこにいたのだと思う。歓声が上がった。最初の感動は少しずつ薄れ、見慣れた動きしかしなくなったようにみえるクジラだったが、子クジラがジャンプしたのだ。それも何度も。なんども。疲れてくるとだんだんジャンプが小さくなる。船に一緒に乗っていたスタッフは、楽しくてしょうがなくなってきたんじゃねの?といっていた。子クジラがジャンプした後、お母さんクジラが、お手本を見せる意味で大きな迫力あるジャンプをすることもあるというが、そこまでの夢はかなえられなかった。でも、ただただ嬉しかった。クジラという僕らとは別の世界に存在すると思っていた生物が、いま目の前にいる。
座間味村のホエールウォッチングはほとんどの確率でクジラに出会うことが出来る。それは、高台から常に海を見ている人がいるのだ。クジラを目で追い続け、船を無線でそこまで誘導する。座間味村でであった漁師さんは、人間に追いかけ回されクジラはかわいそうだと言っていると、人づてに何人かから聞いた。クジラへの想い。座間味のホエールウオッチング協会というのがあるわけだけど、"毎年クジラが戻って来てくれるように、クジラにやさしいウォッチングをしよう”という活動をしている。ホエールウォッチングはクジラのストレスにならないよう、細心の注意が払わなければならない。座間味は親子のクジラが多い。だからなおさら。お母さんは子供を当然守ろうとする。ちゃんとしたルールがある。ストレスにならない距離で、長過ぎない時間で。
次の日、僕はバイクで島を一周した。そうしたら、展望台から無線を持ちながら双眼鏡を見ている、19歳の男性がいた。何見てるんですか?声をかけたら、ホエールウォッチングのためのクジラを探しているのだという。そんな人たちのおかげで、僕たちは、クジラを間近に見ることが出来る。それも毎年。座間味の人たちのクジラたちへの愛が、クジラが恋をして子供を産んで、アラスカやアリューシャンなどの北の寒いところに行くための力をつける。そんな海になっている。近くにいってもいやがらず近づいてきてくれたクジラ親子と、クジラを愛する座間味の人たちに、ありがとうが言いたい。
リンク
・世界が恋する海 座間味村からのメッセージ〜沖縄・慶良間諸島国立公園
・座間味ホエールウォッチング協会(毎日のクジラの頭数・クジラの状況がわかります)
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・世界が恋する海 座間味村からのメッセージ〜沖縄・慶良間諸島国立公園
・座間味ホエールウォッチング協会(毎日のクジラの頭数・クジラの状況がわかります)
旅歩家 HIROSHI KIKUCHI
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