この先にゴールがあるはずと信じて長い時間流れ続けていたが、いよいよ現実を受け入れることにした。
もうこの先に、暖かく誰かが待っていてくれるようなゴールはない。
沖に上がることにした。
乗ってチューブ(浮き輪)から落ちるのではないかという不安を押し切り、ゆっくりと陸に近づいて行った。
その陸は木が生い茂っていて、川沿いが少し開けている程度。
タイヤ状の浮き輪から沖に手をつき、一瞬で飛び移ることができた。やった!
沖にについたもののどうするかと、途方にくれていたが、とりあえず歩いた。なぜか有刺鉄線が地面にあちこちはりめぐされている。はだしなので痛い。
刻一刻暗くなって行く。
そんな中、バイクの音が微かに聞こえる。。人が近くにいるんだ!!
帰ることができる!と、確信した。
何とかそこへたどり着こうと、裸足で必死に追いかける。しかし、地面を踏むたびに鉄線の針がささり痛い。 だけどそんなの気にしてられなかった。走った。
またバイクだ。遠くに小さな赤いテールランプ滲んでいる。追いかけた。
…
ここではたと気づいた。ここはただの中州なのだと。
テールランプとぼくの間には、うっすらと川らしきものが見えたのだ。
くそっ!
また痛い思いをして、地面を踏みしめ、上陸したところへ戻った。
そして、真っ暗の中また川に入る勇気もなく、近くの奥まった木の下、チューブをベットに目を瞑る。
雨の音に
ぶーんぼーん
という無機質な音がかなりの大音量でいくつも飛んでいる。肌をつたう。刺される感覚がする。どんな虫かは見なかった。
目を瞑りながら、怖さに耐えた。
眠りにつこうと、歌を歌った。
歌ったのはコブクロ、ここにしか咲かない花。永遠ににともに。なぜこの曲なのかは今も分からない。笑
歌いながら、見えているのは、まぶたの裏の真っ暗な世界。
そうこうしてるうちに、朝になっていた。
恐る恐る目を開けると、まだうっすらと雨は降っている。
川岸に座って、もしかすると随分と遠いところに来てしまったのかもれないと思い、もう会えないかもしれない家族や友人の名前を、思いつく限り叫んだ。
ところが、しばらくすると、
船に乗って人が漁をしていた。
信じられないながらも、おっきな声で叫んだ。
help me!!! !!!!!
必死に叫ぶが、反応がない。
チラリとこちらをみるが、やっぱり反応がない。なぜだ。英語がわからないのか。実は、見えてないのか。
あとで知った話だけど、よく旅行者が酔っ払ったりドラックをやってあえてこういうところにやって来て、行方不明になって帰ってこなくなるらしい。そんな外国人なんかにきっとかまってられないと思ったのかも知れない。
僕が怖さに耐え目をつぶっていた頃、一緒にチュービングをしていたK子さんは必死に僕のことを探そうとしてくれていた。
探してと係員に食いついても、もう死んだ、帰ってこない諦めろ、と相手にされなかったよう。
彼らは漁を続けていた。
僕は必死に叫び続ける。
その甲斐あってか、諦めかけた頃にらやっと僕を拾ってくれた。
雨に濡れながら船が川を上って行くのをそっと、待った。
チュービングの乗り場までやって来て、裸足で歩いた。K子さんがいた。
何も言わずに目の前に突っ立っただけだったが、彼女はほっと安堵の顔を見せた。
そのあと自分の宿にも戻りしばらく一緒に旅をしていた韓国人の友人たちと顔を合わせる。
なんといっていいかわからず、
一言だけボソッと
アイムソーリー
みんな僕を見つめていた。
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