ふらふらと、かなりゆっくりと一歩、また一歩と踏み出す。
少し暗くなりかけた那覇で、僕は強烈なブルーだった。胸の奥の方がキュッと締まっているような息苦しさ。旅が終わるからなのかもしれない。力なくヨタヨタ歩いていたけど、歩く気力も湧いてこなかった。だから、モノレールに乗ることにした。どこか適当に降りようかなとも思ったけど、結局来たのは終点首里駅。暗くなりかける首里の町。僕は首里城を見てきたであろう観光客に逆行して歩いた。写真を撮る気力も落ちて、写真もiphoneで撮ったり撮らなかったり。
夕日に包まれ、その光たちがもう間もなく消え行こうとしていた。僕は一歩一歩気力を振り絞りながらその光の方向に向かった。あんまり元気は出なかったけど、でもなんとも言えないこの心のもやもや。動きそうだけど、動かない。みたいな。 I almost fall in love you 。僕が好きな英語の例文。恋しそうなんだけど、まだしてない、みたいな。
石畳を登ると、塀があり、その塀には門があった。僕にはこの門が見てきたもの、僕には想像することしかできなあけれど、こーやって、ずっと変わらないものって、なにかを感じる気がする。そして、そのなにかが、僕のなにかを癒やしてくれる気がする。
僕は、その門の近くで寝そべってその少しの明るさが残る中でライトアップされた門をしばらく見ていた。気力がないからなのか、リラックスをしているのか、力がスーッと抜けている。そうやってしばらく時間を過ごして、自分を癒した。ライトアップされた彼らは、そのパワーをより強く感じさせる。
少し歩いた。そしてあったのは、守礼門。彼が見たものを想像しようと、目をつぶって手の平を拡げ、彼に触れた。その日はとんでもなくブルーデーだったおかげで、いろんなことに敏感になっていた。だからこそ、この何かを敏感に感じることができた。そうだ、きっと首里城に足が向いたことは意味があった。
暗がりの守礼門に手を触れている僕を見て、若い女の子二人が、やだ、あの人、大丈夫?失恋でもしたんじゃない??とちゃかして笑っていた。聞こえてるっつーの笑
『明日来てください』ギリギリ、首里城の中には入れなかった。でも。もう十分だった。首里城からの夜景を眺めながら、ノスタルジックにひたってみる。
忘れていた。毎日を、旅のように生きること。目的地を自分で決め、そこに向かって歩き、失敗して、壁にぶつかることだってある。でも上手く行った時はそれ以上に喜びがある。それも両手ではあふれるほどの。そして、時に恋をだってするかもしれない。かけがえのない友情と出会うかもしれない。何をしてもいいんだ。
旅の世界と、それ以外の世界。もしこの世を二つの世界に分けるとするなら、僕は旅以外の世界で、そんな旅の彩りを消し去ろうとしているような気がする。それも必死に。何をそんなに頑固になっているんだろう。でも、消えていなかった。そんなちいさなろうそくの火が。淡々と、僕の心の奥の底を小さく揺らしている。
僕は宿に向かった。足取りは少しだけ軽くっていた。
戻った宿で頂いた手作りケーキ。ありがとうございます |
旅歩家 HIROSHI KIKUCHI
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