WEB STORE『旅写真と僕を支えてくれた言葉たち』
これは、僕の生きてきた証。
自信をなくして勇気が出なくなったとき『自信って自分を信じること』何回も自分に言い聞かせた。
あれは自分に向けた言葉。旅によって自分の生きる場所を小さいながらに見いだしてきた。
いろんなことがあった。楽しいことだって、受け入れがたいことも。
でも旅は僕を救ってくれた。僕の写真と言葉で大切に、勇気づけられると言ってくれる人がいるなら、
僕はあなたにこころを込めた贈り物をしたいと思います。
WEB STORE『旅写真と僕を支えてくれた言葉たち』(https://tabi-photo.stores.jp/#!/)にて、旅で見つけた宝物のメッセージポストカード、販売中。

2014年5月3日土曜日

逃げられるところなんて、どこにもなかった



おはようございます。
式根島より、ブログ更新。

写真は、昨日の船からの朝日。

式根島とは関係ないけど、学生時代の印象に残っこている旅について。

僕は、18歳。

カメラをいつも肩からぶら下げていた。

写真学生の僕。


プレッシャーに押しつぶされそうになり、
カメラを持つと吐き気がした。

1年生の夏。
卒業制作にこれから入って行く。

何を撮ろう。

あれを撮ろうこれを撮ろう。
構想は浮かぶが全くシャッターが切れなかった。

まわりは、ばんばんシャッターを切っている。
自分で焼き付けた写真を嬉しそうに見せ合い、語り合っていた。


僕は、ただ立ち止まったまま。

引け目を感じどんどん卑屈になって行く。

学校にもあまり行かなくなった。



僕は、現実から逃げた。


カメラを持たずに
目的地を決めずに

旅に出た。


京都や広島に行ったんだと思う。

ほんと一日何をしていたのだろう。不思議になるくらい記憶がぼんやり。

僕は最終的に鳥取にたどり着いた。

夜も遅く、鳥取砂丘 に行きたかったがバスももうない。

仕方ないので、砂丘まで歩く事にする。

深夜静まりきった商店街を抜けて、住宅街を抜けて、道はやがて真っ暗になった。

怖くて怖くて、携帯で足元を照らして小走りに歩く。歌も歌った。真っ暗闇のトンネルでは、思いっきり叫んだ。

どれくらい時間がかかったのかはわからない。

僕は、鳥取砂丘についた。

疲れ切っていた僕は少しだけ歩き、その場に寝転がる。
空は真っ暗闇の黒ではなかった。少しだけ青かった。

それがなんともきれいだった。

しばらくその青空を眺めた。





目が覚めたら、もう完全に明るかった。

重たい身体を起こし背伸びをする。
気持ちがなんだかもやもやしていた。


砂丘から鳥取駅まではバスで帰った。

することもないので駅前のミスタードーナツでコーヒーを飲むが、少しだけ胸の奥の方が苦しい。

テーブルの上に置いてあった紙ナプキンに自分のもやもやした思いをぶつけた。

自分はなぜここにいるのか。

思いつくままぎっしりと書き込んだ。

一つわかったこと。

いまここにいるのは現実から逃げてきたんだ。

いまの一番のモヤモヤはそれだ。



帰ろう。

そうと決まったら、もうすぐにでも帰りたかった。
僕はすぐに切符を取った。

その日の夜、僕は寝台特急に乗る。


寝ようとしていた僕の耳に、乗客と車掌の話し声が聞こえた。


女性がかなり切羽詰まった様子で車掌に話しかける。

特急券も充分なお金もも持たずにこの寝台特急に乗ってきたらしい。
もう終電もあるかないかの時間。

どうしても東京に行きたい。
女性は泣いている。

その日の寝台特急はほぼガラガラ。

たげど車掌は、特急券もお金もないんじゃだめ。次の駅でおりて下さい、と。

どんな事情があったのだろうか。
家族に、親しい友人に、なにかあったのだろうか。

そこまでは聞き取れなかった。

女性は、泣き続け、懸命に車掌に話しかけ続ける。

それでも、状況は変わらず。



女性は、あきらめた。

近くのベットに座り、泣き続けた。

僕は、車掌の対応としては当然だと思う。
切符もありません。お金もありません。

それでもそれでも。

と思ってしまう。

女性は、僕が車掌に対して怒りすら覚えざるおえないぐらいに泣いている。

なんとか助けてあげたい。

その思いで、いてもたってもいられずに無我夢中でベットから立つ。

僕は気付くと女性の前にたっていた。

泣いてタオルで覆ったいた顔がジロっとこちらを向く。



…これ、よかったら使って下さい。

どもりながらだけど、言えた。
手には財布に入っていた最後のお札 、5000円を握りしめていた。

僕はもう帰るんだし、大丈夫。そう思った。

こちらを横目で見つめ、
しばらくの沈黙の後、


結構です。


短く端的に、そして冷淡な言い方で言い放った。

そして僕がそこにいなかったの様に、また泣き始める。


女性の言葉が突き刺さった。

別に感謝されたかった訳でもなかった。でも拒絶されたかのようで胸が痛んだ。


僕はベットに戻り、目を瞑る。

誰だかわからない男から、中途半端に5000円もらったところで、どうにもならなかっだろう。
女性のプライドを傷つけたのかもしれない。

余計なことをした。たぶん。
僕にできることはなにもなかった。

ごめんなさい。



僕は、ここへ逃げてやってきた。

でも、ここも現実。
どこにいってもすべて現実。

逃げられるところなんて、どこにもなかった。




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