WEB STORE『旅写真と僕を支えてくれた言葉たち』
これは、僕の生きてきた証。
自信をなくして勇気が出なくなったとき『自信って自分を信じること』何回も自分に言い聞かせた。
あれは自分に向けた言葉。旅によって自分の生きる場所を小さいながらに見いだしてきた。
いろんなことがあった。楽しいことだって、受け入れがたいことも。
でも旅は僕を救ってくれた。僕の写真と言葉で大切に、勇気づけられると言ってくれる人がいるなら、
僕はあなたにこころを込めた贈り物をしたいと思います。
WEB STORE『旅写真と僕を支えてくれた言葉たち』(https://tabi-photo.stores.jp/#!/)にて、旅で見つけた宝物のメッセージポストカード、販売中。

2014年4月10日木曜日

お前は喋ることもできんのかと、罵声を浴びせられて。〜初めての接客。それで もやり甲斐はあった。





学生時代、吃音の僕は初めて接客を経験することになった。喋れなくてお客さんには変な顔をされることもよくあった。

けど、やりたくなかった接客の仕事にもやり甲斐を見つけてほんのちょっと自信が持てたきがする。



「おいしいハンバーガーを作りたいです!」


面接で、そう言った。

その時に吃音のことも打ち明けた。


ハンバーガー店の店長は全く問題ないよ、と言ってくれた。とてもありがたいことに、その場で採用になる。



その仕事の初日は、サラダの仕込みでトマトやサニーレタスなどを切って盛り付けた。
店長は、そういう人と接しない仕事をさせてくれようとしたはずだった。

ところが、他のマネージャーや先輩アルバイトから店長に

「みんな今までのアルバイトは、レジができるようになってから製造に入るわけだし、吃音があっても例外にするのは良くない、やらせてみるべきじゃないのか。」

そう話していた。

店長は少し困り顔になったが、それを受け入れた。

僕がはじめて接客をすることになったお店はみんながとっても元気に挨拶をするとても爽やかなお店だった。


そこで僕は、最初の壁にぶつかった。

ありがとうございます
いらっしゃいませ

が言えなかったのだ。

僕はあ行から始まる言葉がとても言いにくい。

でも大きな声をだしてがむしゃらにやるしかなかった。

自動ドアが開いたら、
い、い、いらっしゃいませ!

レジ越しに商品を渡すときには、
あ、あ、あああありがとうございます!


声が出ないこともあったが、大声でどもった。

そのうち、大きな声で勢いがあれば

言いにくかった、
ありがとうございます、の「あ」
いらっしゃいませ、の「い」

いわなくてもなんとなく通じることがわかった。

りがとうございます!
らっしゃいませ!

そうやって一つ一つ逃げ道を探した。そうやってだんだんと自信がついた。

言えないこともたくさんあったし、お客様からすればしどろもどろに接客をしてるように見えていたかもしれない。

どもっても、こんな自分でも、大きな声を出してお金をもらっている。そんなことが嬉しかった。

そんなこんなで少し慣れはじめていたときの出来事。


いつも24時間営業の僕らのお店に、夜を過ごしにくる常連のおばあちゃんがいた。

彼女が、その日はもう一人お友達を連れてきていた。

いつものブレンドコーヒーを頼む。

今日は、二人なのでふたつ。
いつもくるおばあちゃんの方は、先に席を取りにお店の中の方に入っていった。

おばあちゃんのお友達と、僕は、カウンター越しに対面してた。

僕は、お会計の金額が、全く言えなかった。


息が詰まっている。

しゃべりたいけど、でてこない。

おそらく、口を歪めて歯痒い表情をしてたと思う。


そのときだ。


おまえはしゃべることもできんのかー!!!


店内に大声が響き渡る。

僕は固まった。
時間が止まったようだった。 

先輩がすぐに

申し訳ありません、といって対応を変わった。

いつものおばあちゃんも、お店のおくからやってきて、

この子はそういう子なのよ

と、言ってコーヒーを持って行った。


ショックだった。でも、そのときは何も考えられなかった。
「大丈夫だよ。あの時あんなに大きな声で、あんな言い方することないのにね。」
と先輩が言ってくれたこともその時は耳に入ってきただけだった。でもそれが、そのあと仕事を続ける上ですごく励みになった。


たくさんのできなかったことはあったけど、ほんとにやり甲斐のある仕事になった。

ある日、いつものようにレジでお会計が終わり、

…りがとうございます!

といい終わった僕を、店長が店の奥から大きな声で僕を呼んだ。


君は、接客する時の笑顔がいいよね!

僕は思わず照れ隠しで

「え?」

と聞き返してしまった。



「たまに褒めるとこれなんだから。
もう言ーわないよー」


滅多に褒めてくれなかった店長が、唯一あの時だけ褒めてくれた。


店長、ありがとうございます!


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